◆一括貸倒引当金
ここまでの4回で、個別貸倒引当金のお話をしてきましたが、今回は一括貸倒引当金です。
個別評価引当金は貸し倒れる可能性が非常に高い取引先に対する金銭債権に引当金を繰り入れるものでしたが、通常の貸倒る確率が低い先に対しても引当金を繰り入れることができます。
実際に取引先の都合によっては回収できなるケースがないわけではないので、リスクの軽減を図る目的から引当金を繰り入れられる(損金計上)のです。
繰入の計算方法には2種類あります。
貸倒実績率(実際の過去の貸倒率)による繰入限度額と法定繰入率(税法上の貸倒率)による繰入限度額です。いずれか多い方の金が繰入限度額となるのです。
~貸倒実績率による貸倒引当金繰入限度額~
計算方法は簡単です。ただし、貸倒実績率を算出しなければなりません。
貸倒引当金繰入限度額=一括評価債権×貸倒実績率
○一括評価債権とは何でしょう?
一括評価債権とは個別評価金銭債権とした債権を除外した債権です。つまり、不良債権ではなく、一般の債権です。すでに個別評価債権の引当金は計算されていますからね。
基本的には“将来金銭による取立てを目的としているもの”という考えから売掛金や貸付金など回収されることが前提となっているものです。保証金や敷金、手付金などはこの一括評価債権には含まれません。
○貸倒実績率とは何でしょう?
貸倒実績率は自社において、実際に過去に貸倒れた金額を調べて、計算するものなのです。つまり、貸倒実績率は各々の会社で違ってきます。
○“実質的に債権とみられない金額”とは何でしょう?
実質的に債権とみられない金額とは売掛金や受取手形などの金銭債権がある相手に対し、買掛金や支払手形などの金銭債務がある場合この金額に該当する額は実質的に債権としてはになされません。
この実質債権とみなされない金額については原則法と簡便法があります。
○法定繰入金とは何でしょう?
法定繰入金とは実際の貸倒率は関係なく一律税法で決められている率のことです。
これは、業種によってそれぞれ決められています。
卸売業・小売業・飲食店等…10/1000
製造業…8/1000
金融業・・・3/1000
割賦小売並びに包括信用購入あっせん業等…13/1000
その他…6/1000
貸倒引当金繰入額は、貸倒実績率によるものと、法定繰入率によるものとを計算し、いずれか多い方の金額が繰入限度額となります。
売上債権の金額の多い場合、少し手間ではありますが将来のリスクの軽減と何より節税の観点からも貸倒引当期を繰り入れる価値は十分あると思います。