一昔前は役員賞与は法人税の計算上損金として認められませんでした。それは「仮決算したら法人の利益が500万も出そうだ。それなら役員賞与500万出しちゃえ」という法人税逃れを防止するためです。
しかし10年ほど前の会社法の大改正時に「役員も会社に雇われてる従業員なわけだからボーナス出してもいいよね」という会計上の解釈が変わったのに伴い法人税も妥協案として「期首にあらかじめ賞与の額を決めて税務署に報告する場合は、役員賞与も認めるよ」となりました。
事前確定届出給与とはいったいどんなものなのでしょうか?
◆事前確定届出給与
下記の要件を満たす役員給与です。
・事前に定めた各役員ごとの具体的な支給額を同じく事前に定めた具体的な支給時期に
支給すること。
・一定の期限までに、具体的な支給額、支給時期などを記載した届出を提出すること。
提出時期…株主総会の1か月後、または事業年度開始の日から4ヶ月を経過するいずれ
か早い日まで。
…あれ?
前回の定期同額給与は事前の届出など必要なかったのに、今回の事前確定届出給与は所轄税務署に前もって届出をしなければならないの?
…正直言って、なんだか事務負担が増えてます。
でも、メリットはあるんです。
業種によっては毎期年間の売上が時期によって大幅に上下することもあります。この時、毎月の給与を定額にしていると、売上の厳しい時期には支給が困難な場合もありますよね。
そうです! この事前確定届出給与は毎月定額である必要はないのです。
誤解の内容に言っておきますが、毎月その都度思いついた額を給与にしていいというわけではありません。1年分の給与の額、支払い時期などを前もって届出した通りの額という意味での、定額でなくていいという意味です。
もちろん、事前に届出を行っていた通りの給与でない場合、損金不算入となりますのでご注意ください。
売上の少ない時期は支給額を少し控えめに設定して、逆に売上の多い月は支給額を上げるといった設定ができます。
でも、中小企業においてこの事前確定届出給与を採用する場合の多くは、期中においてもともと役員ではなく、従業員だった方が急きょ役員になった場合や会社の外部から新たに役員を迎え入れた場合などに採用する場合かもしれません。
例
たとえば、通常は定期定額給与を採用していた企業が、何らかの利用で期中に新たに役員を迎え入れたとします。そして、所轄税務署に事前に届出をせずに、通常どおり定期定額で新任役員に給与を支給していました。
実は損金不算入となってしまいます。
なぜ、この場合損金不算入となったのでしょう?臨時改定事由に基づく改定による役員給与とはみなされないのです。
これは、法令上で定義する臨時改定事由は「役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これに類するやむを得ない事情」とされ、現行で役員でない方については想定されていないのです。
今回の例で挙げた新任役員はもともとこの企業の役員ではなかった(外部から役員を迎え入れた)ので、定期同額給与の臨時改定事由のとは認められないのです。
そこで事前確定届出給与を採用し、臨時総会等で決議をしたその日(その日が役員の職務の執行を開始する日後である場合には、その開始の日)から1ヶ月を経過する日までに新任役員に係る事前確定届出書を所轄税務署に提出し、届出どおり給与を支給すれば損金算入が認められます。
知っているのと、知っていないのとでは大きな差が出ちゃうものです。