昔から「医療専門特化」とうたう税理士事務所はあります。
これは開業医、医療法人、社会福祉法人というのは①利益の出る職種なので高額の税理士報酬が見込めること、②案外会計内容が単純で手間がかからない、…つまり高単価低関与のドル箱顧問先になりえるので医療専門と宣伝して顧問先を釣って(笑)いました。
建設業専門って税理士も昔からいました。これは鹿児島の場合絶対的に建設業者数が多いのと、県への手続きなど税務の他に報酬をいただけるシステムがあったので建設業専門に力を入れたのだと思います。
ここ5年ほどでしょうか、全国的に上記以外の業種特化税理士が増えて来た気がします。
ヘアサロン専門税理士、飲食店専門税理士、風俗専門税理士…私が一番びっくりしたのはベーカリーショップ専門税理士まで存在することです。
業種特化するメリットとしては、①同業種の数をこなすことで業界のことに詳しくなり顧問先に様々な助言が出来るようになる。②同じような会計内容なので効率よく処理できる。③同業者からの紹介が受けやすい。④専門税理士ということを広告してその業種の顧問先を獲得しやすい。などが考えられます。
ヘアサロン専門税理士として有名なのはF県のA会計さんでしょうか。以前一度セミナーを受けたことがあるのですが、本当に感心いたしました。徹底しています。顧問先はヘアサロンのみなのです。ほかの業種の見込み客があっても断っているそうです。
美容業というのは我々税理士業界からすると「帳簿めちゃくちゃなのに報酬は安いのであまり顧問したくないなあ」というのが共通意識だと思いますが、それを逆手にとって通常の税理士がしたがらない美容業の業種特化をしています。
会計事務所側で会計マニュアルを作成し美容室にそれを従わせる。ルールを守らない美容室は顧問契約を切るなど徹底した作業マニュアルを確立して、安い顧問料ながら流れ作業的に量をこなすことで利益を出すそうです。
業績の説明もヘアサロン経営者は難しい会計の話をしてもわからないので、試算表や決算書でなく独自の簡易表を使って業績の開設をするそうです。
私個人的にはすごい感覚だなと感服したのですが、TKCはこの税理士の商法が嫌いなようで、会報でわざわざ名指しで批判していましたね。器が小さいと思いました。
飲食店専門税理士として有名なのは東京のI税理士事務所でしょうか。飲食店経営者の一番の悩みである「開業したいけど設備投資資金やテナント敷金がない」という問題を、金融機関からの創業融資支援を含めて開業からお手伝いして顧問するというスタイルです。
一番面白いと思ったのは風俗専門の税理士さんです。東京のM税理士さんですが、書籍を出したり、深夜のお色気情報番組に出演して顔を売っておられます。ただ納税意識が薄い業種ですので脱税事件が後を絶たず税務調査が厳しく国税局扱いや査察の調査もあるそうです。くわえて浮き沈みが激しい業界なので顧問になってもすぐ倒産したり報酬未払いになったりと大変そうでした。ハイリスクハイリターンですね。
税理士の業種特化…おもしろい商法なのですが、どうしても都会限定のような気がします。
東京のような1000万商圏と違い鹿児島のような60万商圏ですと同業種者の数も少ないですしね。