◆個別貸倒引当金
個別貸倒引当金は貸し倒れが懸念される債権と前回述べましたが、結構細かな基準があります。
「取引先のA社さんは最近支払いが遅れがちだから貸倒引当金を設定しておこう。」というようなざっくりとした主観が入ったものではないんです。
税法上、個別貸倒引当金の設定は下記の3つの基準の場合に繰り入れが認められています。
形式基準・長期棚上げ基準・実質基準の3つです。
ちなみに実務上において一番利用されている基準は形式基準だと思います。
~“形式基準”における個別貸倒引当金~
形式基準とは将来において貸倒損失が計上されると見込まれる法的事実がある場合、貸倒引当金の繰り入れが認められます。
法的事実って何でしょう?
- 法令の整理手続きの開始申立てを取引先(破たん取引先)が行った時です。
・更生手続き開始の申立て
・再生手続きの申立て
・破産手続開始の申立て
・特別清算開始の申立て
- 手形交換所の取引停止処分を受けた時(不渡りを2回出した時)
上記の2つのいずれかの法的事実が起こった時に貸倒引当金を税法上繰り入れることが認められます。
~税法上の繰入限度額~
繰入限度額=(個別評価債権※1-取立等見込額※2)×50%
※1 個別評価債権 売掛金・受取手形・未収金や貸付金などこれらに準ずるもの
※2 取立等見込額 担保分の額や先方に対する買掛金、第三者振出の手形など
相手に対して売掛金もあけど買掛金もあるみたいな場合や
金融機関などによって保証されている部分の金額。
ちなみに、先方に振出した支払手形はこの取立見込額に含みません。
すでに、裏書や割引されている可能性もあるためです。
例:破産手続開始の申立てを行ったA社に対して売掛金100万円があるが、同様にA社に対し30万円の買掛金と支払手形15万円がある。A社に対する貸倒引当金を繰り入れる。
(100万円(売掛金)-30万円(買掛金))×50%=35万円(貸倒引当金繰入限度額)
※支払手形は取立等見込額には含みませんので、差引く金額は買掛金の30万円だけです。
中小企業おいて貸倒引当金は法人税法上の繰入限度額相当額を繰り入れるのが常ではないでしょうか。この限度額を超えて繰入れても損金不算入となりますので、貸倒引当金繰入額超過額を生じさせることは多くはないでしょうね。